本記事にはプロモーション(広告)が含まれます。
老後資金をAIで試算してみた
2000万円問題の中身と、AIの限界
「老後2000万円」という言葉だけが一人歩きしています。私も長いこと、その数字を漠然と怖がっていました。
ただ、調べてみるとこの2000万円という数字は、そもそも「あなたに必要な額」ではありません。まずそこから整理して、そのうえでAIを使った試算のやり方と、使ってみて分かった限界を書きます。
「2000万円」の中身を知る
この数字が広まったのは、2019年に金融庁の審議会がまとめた報告書がきっかけでした。ただ、報告書そのものが「2000万円貯めなさい」と言ったわけではありません。
もとになった計算
高齢夫婦の無職世帯の平均で、収入より支出が毎月およそ5万円多いという家計調査の数字がありました。これが30年続くと仮定すると、5万円 × 12か月 × 30年 = 約2000万円。この試算が独り歩きしたものです。
ここで大事なのは3つです。
- 平均の話である。持ち家か賃貸か、年金額、住む地域、健康状態で大きく変わります
- その年の家計調査の数字にもとづいている。調査年が変われば不足額も変わります
- 30年という仮定が置かれている。何歳まで働くかでも変わります
つまり「2000万円」は誰かの平均であって、自分の数字ではありません。 ここを分けて考えるだけで、不安の性質が変わりました。怖いのは金額そのものではなく、自分の数字を知らないことだったからです。
まず公式ツールで年金額を見る
試算をする前に、やっておくべきことがあります。自分が将来いくら年金を受け取れそうかを、公式の情報で確認することです。
AIに「私の年金はいくらですか」と聞いても、正確な答えは返ってきません。あなたの加入記録を持っていないからです。それらしい数字が出てきても、根拠がありません。
先に見るべきもの
- ねんきん定期便(毎年、誕生月に届きます)
- ねんきんネット(日本年金機構の公式サービス。加入記録と見込み額が確認できます)
- 厚生労働省の公的年金シミュレーター(働き方を変えた場合の見込みも試せます)
この3つは、あなた自身の記録にもとづいた数字です。AIの推測とは信頼度がまったく違います。ここで得た金額を土台にしてください。
私はここを飛ばしてAIに聞いてしまい、あとで定期便を見て数字が違うことに気づきました。順番を間違えると、間違った前提の上で悩むことになります。
AIに渡してはいけない情報
家計の試算は、性質上かなり生々しい情報を扱います。私が渡さないと決めているものです。
| 渡さないもの | 理由 |
|---|---|
| 金融機関名・口座番号 | 試算に一切不要 |
| マイナンバー・基礎年金番号 | 絶対に入力しない |
| 氏名・住所・生年月日 | 年齢だけで足ります |
| 勤務先名 | 不要 |
| ねんきん定期便の画像 | 個人情報が全部載っています |
| 保険証券・ローン契約書 | 同上 |
特に注意したいのが「書類を撮って貼る」やり方です。手っ取り早いのですが、そこには名前も番号も全部写っています。必要な数字だけを、自分で打ち込むようにしてください。
📚 老後の不安を数字で解消したい方へ
本当の自由を手に入れるお金の大学
「貯める・稼ぐ・増やす・守る・使う」の5つのお金の力を解説。Claudeでシミュレーションする前にこれを読むと、何をシミュレーションすべきかが明確になります。
※本リンクはアフィリエイトリンクです
金額を渡さずに試算する方法
ここが今回いちばん役に立った工夫です。実際の金額を渡さなくても、試算はできます。
やり方は簡単で、基準になる数字を1つ決めて、あとは比率で表すだけです。
例
「毎月の生活費を100とします。
年金の見込み額は70、住宅ローンの返済は25(あと12年)、教育費は今後10年で毎月30を見込んでいます。
現在の貯蓄は生活費8か月分です。」
この形なら、実際の年収も貯蓄額も渡していません。それでも「いつ、どれくらい足りなくなるか」という構造は同じように計算できます。 出てきた結果に、最後に自分で本当の金額を掛ければいいだけです。
この方法に変えてから、家計の相談にAIを使う心理的なハードルがかなり下がりました。
実際のプロンプト
・毎月の生活費を100とした比率で書いています
・(条件を箇条書きで)
お願いしたいこと:
・置いた前提をすべて箇条書きで明示してください
・計算過程を省略せずに書いてください
・前提を変えると結果がどれくらい変わるかも示してください
・私が伝えていない数字を勝手に置かないでください。足りない情報があれば、まず質問してください
最後の一文が重要です。これを入れないと、AIは「一般的な平均値」を勝手に当てはめて計算します。 その結果は、他人の平均で作った、あなたとは関係のない数字です。
「計算過程を省略せずに」も必ず入れます。理由は次に書きます。
AIの試算で分かった限界
実際にやってみて感じた、正直な限界です。
①計算を間違えることがある
これは実際に起きました。長い期間の積み上げ計算で、桁や年数がずれることがあります。しかも堂々と、それらしい表にして出してきます。
対策は2つです。計算過程を書かせて、区切りのいい年だけ電卓で検算する。 それと、合計が合っているかを自分で確かめる。この2つで、ほとんどのミスは見つかります。
②前提を置いた瞬間に、答えは前提で決まる
運用の利回りを何%と置くか、物価上昇を何%と置くか、何歳まで働くか——この3つを変えるだけで、結果は数百万円単位で動きます。
つまり出てきた数字は、AIが導いた答えではなく、自分が置いた前提の結果です。ここを理解しないと、都合のいい前提を置いて安心するだけになります。
③制度の細かい部分は当てにならない
年金の受給開始年齢の選択、税や社会保険の扱い、控除の条件——このあたりは制度が変わりますし、条件も細かいです。AIの説明を最終的な根拠にしないでください。
④「いくら必要か」は決められない
そもそもの話ですが、老後にいくら必要かはどう暮らしたいかで決まります。 ここはAIには決められません。自分と家族で話すしかない部分です。
1つの数字ではなく「幅」で見る
試算をやり直しているうちに、1つの数字を出そうとするのが間違いだったと気づきました。いまは3パターンで見るようにしています。
| パターン | 置き方 |
|---|---|
| 厳しめ | 年金は少なめ、物価上昇は高め、運用益はゼロで計算 |
| 標準 | 公式ツールで出た見込み額をそのまま使う |
| 楽観 | 長く働く前提。ただしこれは「そうなればいい」の想定 |
大事なのは、「厳しめでも生活が破綻しないか」を見ることだと思っています。楽観の数字は、見ても気が休まるだけで役に立ちません。
数字を見たあとに変えたこと
試算をして一番よかったのは、金額が分かったことではなく、「不安の置き場所」が変わったことでした。
それまでは老後・教育費・住宅ローンを全部いっぺんに心配していました。試算してみると、一番きついのは老後ではなく、子供の教育費が重なる時期だと分かりました。順番が見えると、いま何を考えるべきかがはっきりします。
具体的に変えたのは、こんなことです。
- 毎月の固定費を1つずつ見直した(1回減らせば、その効果は毎月続きます)
- いつ、いくら必要になるかを表にした(教育費のピークがいつ来るか)
- 収入を増やす方を考え始めた——このブログを始めたのも、その一環です
ちなみに副業を始めると税金の話が出てきます。そちらは副業の税金、サラリーマンはどこから確定申告?にまとめました。
FP相談を考えるときの注意
「無料のFP相談」はよく見かけますが、無料である理由を知っておいたほうがいいと思っています。
- 相談自体が無料でも、保険や金融商品の販売が収益源になっている場合があります
- その場合、提案が特定の商品に寄る可能性は否定できません
- 相談料を払う形(有料相談)のFPもいます。どちらが良いという話ではなく、収益の出どころを知ったうえで聞くのが大事です
相談するなら、その場で契約しないと決めておくくらいでちょうどいいと感じています。持ち帰って、家族と話して、それから決めれば十分です。
よくある質問
Q. AIの試算はどれくらい信じていいですか?
「構造を理解するための道具」くらいに考えるのがちょうどいいです。いつ足りなくなりそうか、何を変えると効くのか——そういう傾向をつかむには十分役に立ちます。金額そのものの精度は期待しないでください。
Q. 具体的な運用方法も聞いていいですか?
制度の一般的な説明を聞くのは構いませんが、「何を買うべきか」の答えを求めるのはやめたほうがいいと考えています。AIはあなたの状況もリスク許容度も知りませんし、私も専門家ではありません。
Q. 表計算ソフトで自分でやるのとどちらがいいですか?
計算そのものは表計算ソフトのほうが確実です。AIが向いているのは、「何を条件に入れるべきか」を洗い出す段階だと感じました。「見落としている費用はありませんか」と聞くと、考えていなかった項目が出てきます。
Q. 家族に見せるときのコツは?
数字の羅列より、「何歳のときに何が起きるか」の表にしたほうが伝わりました。不安を共有するのが目的ではなく、いつ何を決めるかを一緒に見るのが目的です。
- 「2000万円」は平均から出た試算であって、自分に必要な額ではない
- 先にねんきん定期便・ねんきんネット・公的年金シミュレーターで自分の記録を確認する
- AIに口座情報・マイナンバー・定期便の画像を渡さない
- 生活費を100とした比率で渡せば、実額を出さずに試算できる
- プロンプトに「前提を明示」「計算過程を省略しない」「伝えていない数字を置かない」を入れる
- AIは長期の積み上げ計算を間違えることがある。区切りの年で必ず検算する
- 結果はAIの答えではなく、自分が置いた前提の結果
- 1つの数字ではなく厳しめ・標準・楽観の3パターンの幅で見る
- 制度の詳細や商品選びの判断はAIに委ねない
- 無料のFP相談は収益の出どころを知ったうえで。その場で契約しない
やってみて分かったのは、数字が怖いのではなく、知らないことが怖いということでした。金額の正確さより、「いつ、何が起きるか」の順番が見えたことのほうが大きかったです。


コメント