AIで社内マニュアル・手順書の
下書きを作る方法
「あの作業、マニュアルにしておいて」。言われてから半年、私は何も書いていませんでした。作業自体はできる。でも、それを文章にするのが面倒で、後回しにし続けました。
結局やったのは、自分が作業しながら口で説明したものを文字にして、AIにマニュアルの型に流し込ませることでした。文章にする面倒がなくなった分、1日で下書きができました。
この記事は、その手順です。ただし、社内の手順書には会社の情報が含まれます。何をAIに入れていいかは、会社のルールが最優先で、そのうえで私がどう線を引いたかを書きます。会社がAI利用を認めていない場合、この方法は使えません。
マニュアルが書けない理由は「文章化」だった
マニュアルが書けないのは、作業を知らないからではありません。作業はできる。できることを、順番に、他人に分かる文章にする作業が重いのです。
私が半年放置した理由を分けると、こうでした。
- どこから書けばいいか分からない——最初の一文が出ない
- 自分には当たり前のことを、どこまで書くか決められない——「ログインする」から書くのか
- 書き始めると、例外や注意点を全部入れたくなって終わらない
この3つは、全部「文章にする」段階の問題です。「作業を説明する」ことと「文章にする」ことを分ければ、前者は自分、後者はAIに渡せます。
全体の流れ【話す → 文字にする → 型に流す → 直す】
| 段階 | 誰が | 時間の目安 |
|---|---|---|
| ①作業しながら口で説明し、録音する | 自分 | 作業時間+α |
| ②文字起こしして、機密を置き換える | 自分(文字起こしは道具) | 20分 |
| ③マニュアルの型に流し込む | AI | 5分 |
| ④下書きを直す | 自分 | 30分 |
| ⑤他の人に読んでもらう | 同僚 | — |
AIがやるのは③だけです。それでも、①〜⑤の中で一番重かったのが③(文章化)だったので、全体は軽くなりました。時間は私の1回の経験なので、目安です。
①作業しながら口で説明する
実際にその作業をやりながら、隣に新人がいるつもりで、声に出して説明します。スマホの録音アプリで十分です。
コツは2つです。
- 「なぜそうするか」も言う——「ここでチェックを外す。外さないと後で二重に登録される」。理由があると、読む人が応用できます
- 迷った場面は「ここ迷う」と言っておく——あとで文字を見たときに、注意点の候補になります
話す前に、作業の「始まり」と「終わり」だけ決めておきます。「申請書を受け取ってから、承認の連絡をするまで」のように。ここが決まっていないと、話が前後の作業に広がります。
録音を文字にするのは、スマホや文字起こしの道具に任せます。精度は完璧でなくて構いません。AIに渡すのは「話した内容」であって、きれいな文章ではないからです。
②置き換えてから渡す【機密の線引き】
ここが一番大事な段階です。文字起こしをそのままAIに渡してはいけません。話しているうちに、顧客名やシステム名、金額が自然に出ています。
まず会社のルールを確認します。業務でのAI利用が認められているか、認められているならどのツールか、何を入れてはいけないか。ここは私が決められることではありません。
そのうえで、渡す前に文字起こしを読んで、次のものを置き換えます。
| 置き換えるもの | 置き換え後の例 |
|---|---|
| 顧客名・取引先名 | 「取引先A」 |
| 社内システムの名前・URL・ID | 「受注システム」「管理画面」 |
| 人の氏名・部署名 | 「担当者」「承認者」 |
| 金額・数量・単価 | 「金額」「数量」(値は書かない) |
| パスワード・アカウント情報 | そもそも録音で言わない。出ていたら消す |
置き換えたあとの文章を読んで、「これが社外に出ても困らないか」を1回考えます。困るなら、まだ置き換えが足りません。マニュアルの「型」を作るのに、本当の名前は要りません。返ってきた下書きに、自分で本当の名前を戻します。
会社の情報をどこまでAIに入れていいかの考え方は、別の記事にまとめる予定です。この記事では「置き換えてから渡す」だけ覚えてください。
③頼み方【実際のプロンプト】
・構成は「目的」「対象者」「前提(必要なもの)」「手順(番号つき)」「注意点」「困ったとき」の6項目
・手順は1ステップ1動作。「〜して〜する」は2つに分ける
・話の中で「なぜ」と言っている部分は、そのステップの補足として残す
・「ここ迷う」と言っている部分は「注意点」に入れる
・話していないことは補わないでください。不明な点は「要確認」と書いてください
・文体は「〜します」「〜してください」で統一
(置き換え済みの文字起こし)
「話していないことは補わないで」が一番大事です。これを入れないと、AIは一般的なマニュアルにありそうな手順を勝手に足します。実際の作業にない手順が入ったマニュアルは、読んだ人を迷わせます。
「1ステップ1動作」は、読む人が指で追える単位にするためです。「画面を開いて確認して保存する」が1つのステップだと、どこまでやったか分からなくなります。
④下書きを直す3か所
返ってきた下書きは、そのままでは使えません。私が直すのは主に3か所です。
「要確認」を全部埋める
話し漏らした部分が「要確認」になっています。もう一度作業して埋めるか、その手順を削るかを決めます。削れないものは、また口で説明して追加します。
置き換えた名前を戻す
「取引先A」「受注システム」を、社内で通じる本当の名前に戻します。ここは会社の中でやる作業で、AIには戻させません。戻し忘れがないか、置き換えた語で検索します。
「当たり前」の粒度をそろえる
「ログインする」まで書くのか、書かないのか。対象者が新人なら書く、経験者なら書かないと決めて、全体をそろえます。AIの下書きは、ここがばらばらなことが多いです。
⑤他の人に読んでもらう
マニュアルは、書いた本人には正しく見えます。その作業をやったことがない人に、マニュアルだけ見て作業してもらうのが一番の確認です。
止まった場所が、マニュアルの穴です。私の場合、「画面の右上のボタン」と書いた場所で止まりました。画面の見た目が人によって違ったからです。「〇〇と書かれたボタン」に直しました。
読んでもらう相手がいないなら、1週間あけて自分で読みます。1週間たつと、自分も「知らない人」に少し近づきます。
自分で最終確認すること
- 手順の順番が実際の作業と同じか——AIは論理的な順に並べ直すことがあります。実際の画面の順と違うと、使えません
- 置き換えた語が残っていないか——「取引先A」「担当者」で検索する
- AIが足した手順がないか——「補わないで」と頼んでも、たまに入ります。自分の説明になかったものは消す
- 会社の書式や保管場所のルールに合っているか——マニュアルの置き場所や承認の流れは、会社ごとに決まっています
報告書や議事録でも同じですが、AIが作った文書は「それらしい」ので、読み流してしまいます。手順書は、間違いがそのまま作業ミスになるので、他の文書より念入りに見ています。議事録の場合の注意はAIで議事録を作る方法【プロンプト例と社内ルールの注意点】に書きました。
よくある質問
Q. 録音せずに、箇条書きのメモから作れますか?
作れます。ただ、メモだと「なぜ」と「迷った場所」が抜けやすいです。口で説明すると、自然に理由を言っています。録音が難しい環境なら、メモに「なぜ」の列を足してください。
Q. 画面のスクリーンショットも渡していいですか?
私は渡していません。画面には、置き換えきれない情報(他の案件名、社員名、システムの構成)が写り込みます。画像は下書きが完成してから、社内で自分で貼ります。
Q. 会社がAI利用を禁止しています
この方法は使えません。ただ、①の「作業しながら口で説明して録音する」と②の「文字にする」までは、AIなしでできます。文字起こしを自分で型に流し込めば、ゼロから書くよりは楽です。
Q. 既存のマニュアルの更新にも使えますか?
使えます。古いマニュアル(置き換え済み)と、変わった部分の口頭説明を一緒に渡して、「変更点だけ反映して、他は変えないで」と頼みます。「他は変えないで」がないと、全体が書き換わります。
Q. プレゼン資料や報告書も同じ流れですか?
考え方は同じで、「中身は自分、型はAI」です。プレゼンの構成はプレゼン資料の構成をAIで作る方法【社内提案・予算申請のプロンプト例】、報告書はAIで報告書を書く方法【月次報告のプロンプト例と社内ルールの注意】に書きました。
- マニュアルが書けないのは「文章化」が重いから。説明は自分、文章化はAIに分ける
- 流れは①作業しながら口で説明し録音 → ②文字にして置き換え → ③AIで型に → ④直す → ⑤他人に読ませる
- 話すときは「なぜ」と「ここ迷う」を口に出す。始まりと終わりを先に決める
- 会社のルールが最優先。顧客名・システム名・氏名・金額・パスワードは置き換えてから渡す
- プロンプトに「6項目」「1ステップ1動作」「話していないことは補わない」
- 直すのは「要確認」を埋める・名前を戻す・当たり前の粒度をそろえる
- 最後は作業を知らない人にマニュアルだけで作業してもらう。止まった場所が穴
半年放置したマニュアルは、この流れで1日で下書きになりました。中身はAIが作ったのではなく、私が話したものです。AIがやったのは、話し言葉を手順書の形に並べ直すことだけでした。それでも、その「並べ直す」が一番重かったのだと、終わってから気づきました。

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